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Hermes Agentとは?使うほど賢くなるAIエージェントの仕組みとOpenClawとの違い

Hermes Agentとは?使うほど賢くなるAIエージェントの仕組みとOpenClawとの違い

ZenChAIne·
AIエージェントオープンソース

はじめに

2026年初頭、Nous Research が Hermes Agent をリリースしました。タグラインは "The agent that grows with you" ——使うほどに賢くなる自己改善型の AI エージェントです。MIT ライセンスの完全オープンソースで、GitHub スターは10万超(2026年4月時点)。2026年最速クラスの成長を見せるエージェントフレームワークとなっています。

最新バージョンは v0.10.0(2026年4月16日リリース)で、70以上のbuilt-inスキルと50以上のoptionalスキルを搭載しています。CLI に加えて Telegram、Discord、Slack、WhatsApp など15以上のプラットフォームに対応し、日常のあらゆる場面で利用可能です。

この記事のポイント

  • Hermes Agent はタスク完了ごとにスキルファイルを自動生成するクローズドラーニングループを搭載
  • OpenClaw(35万超 stars)の広範なエコシステムに対し、Hermes は深い学習ループで差別化
  • MIT ライセンスの完全オープンソースで、公式の curl install.sh で簡単に導入可能

クローズドラーニングループとは?

Hermes Agent の核心は クローズドラーニングループ です。タスクを完了するたびに手順を分析し、再利用可能なスキルファイルを自動生成します。次に同種のタスクが来たとき、そのスキルを即座に適用できるのです。

このループは3つの要素で構成されています。

  1. スキル自動生成: タスク完了後、手順を分析して再利用可能なスキルファイルを作成。使うたびにスキルの精度が向上する
  2. 自己評価サイクル: 15タスクごとにパフォーマンスを自己評価し、改善点を特定する
  3. クロスセッション検索: FTS5によるクロスセッション検索とLLM要約により、過去の知見を効率的に活用する

単なるメモリ機能ではなく、「学習して改善する」サイクルが組み込まれている点が特徴です。リピートタスクの速度向上効果が報告されていますが、公式の定量値は現時点で公開されていないため、実環境での効果はワークフローに依存します。

さらに、エージェントキュレーションメモリ による定期的なナッジと、Honcho弁証法的ユーザーモデリング によって、ユーザーの意図や好みも継続的に学習していきます。

Gateway と Agent の2層アーキテクチャ

Hermes Agent は Gateway 層Agent 層 に分かれた 2 層アーキテクチャを採用しています。これにより「サーバーレスで低コスト運用」と「スケジュール実行やメッセージング連携」を両立しています。

Gateway 層(軽量・常時稼働)

  • 15 以上のメッセージングプラットフォーム(Telegram、Discord、Slack 等)との連携
  • 60 秒ごとに動く内蔵スケジューラ(cron ジョブを検知)
  • セッションのルーティングと Webhook 受信
  • 軽量なため最小 VPS($1-5/月)で運用可能

Agent 層(重い処理・サーバーレス)

  • LLM 呼び出し、ブラウザ操作、シェルコマンド実行
  • スキルとメモリの読み書き(永続ボリュームにマウント)
  • タスク発火時のみ起動し、完了後は休止
  • Modal / Daytona を使えば非アクティブ時は課金ゼロ

例えば「毎朝8時に Gmail と Slack の重要なメールを要約して」という指示を出すと、Hermes は自然言語を cron 式(0 8 * * *)に変換して Gateway 内部 DB に保存します。毎朝 8 時、Gateway が検知して Modal でエージェントセッションを起動、タスク完了後に休止します。この間、Modal 側の課金は実行した数分のみです。

Modal のような AI ワークロード向けサーバーレスプラットフォームは 永続ボリューム を備えているため、セッションが消えてもスキルファイルやメモリ DB は保持されます。Cloud Run のようにステートレスなサービスだと永続化を自作する必要があり、Hermes との相性はあまり良くありません。

OpenClawやClaude Codeとどう違うのか?

Hermes Agent の立ち位置を理解するには、主要な競合との違いを押さえる必要があります。結論から言えば、Hermes は 深い学習ループ に特化し、OpenClaw は 広範なインテグレーション に強みを持っています。

OpenClaw との比較

観点Hermes AgentOpenClaw
GitHub スター10万超35万超
コア機能自己改善ラーニングループ広範なインテグレーション
セキュリティ2026年4月時点で公知のエージェント固有CVEは確認できない2026年3月に複数のCVEが報告された(GitHub Security Advisory 参照)
UX発展途上成熟
ライセンスMITApache 2.0

OpenClaw は2026年3月に複数のセキュリティ脆弱性(CVE)が報告されました。一方、Hermes Agent は2026年4月時点で公知のエージェント固有CVEは確認できません。

Claude Code との比較

Claude Code はコーディングタスクに特化した強みを持ちます。Hermes Agent は独立した SWE-Bench スコアを公開していません。コーディング特化ではなく、汎用的な自律性に注力しているためです。

実務での併用

興味深いのは、実務では Hermes と OpenClaw を併用するケースがあることです。OpenClaw をオーケストレーター、Hermes を実行スペシャリストとして配置し、ACP プロトコルで連携させる構成です。両者は競合というよりも、補完関係にあると言えます。

インストールと初期設定

Hermes Agent のインストールは3つの方法から選べます。セットアップも対話式で簡単です。

インストール

公式推奨は curl によるインストールスクリプトの実行です。Linux / macOS / WSL2 / Termux(Android)に対応しています。

bash
# 公式推奨(Linux/macOS/WSL2/Termux対応)
curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/NousResearch/hermes-agent/main/scripts/install.sh | bash

インストーラが依存関係(Python、Node.js、ripgrep、ffmpeg)、リポジトリのクローン、仮想環境の構築、グローバルの hermes コマンド設定を自動で行います。

セットアップと起動

bash
# 初期設定(OpenClawからの移行ウィザードあり)
hermes setup
 
# 起動
hermes
 
# TUIモードで起動
hermes --tui

対応モデル

Hermes Agent は多様な LLM プロバイダに対応しています。

  • Nous Portal / OpenRouter(200+モデル)
  • NVIDIA NIM / Kimi/Moonshot
  • OpenAI / Hugging Face
  • カスタムエンドポイント

最低64Kトークンのコンテキストが必要です。

デプロイ方法と料金

Hermes Agent は 6 種類のターミナルバックエンドに対応しています。local / Docker / SSH / Daytona / Singularity / Modal です。このうち Daytona と Modal はサーバーレス実行 に対応しており、エージェントが非アクティブな間は環境が休止し、リクエストが来たときだけ起動します。

この構成を使うと、セッション間のコストはほぼゼロに抑えられます。常時稼働する VPS($5-10/月)と違い、エージェントがアクティブな時間分だけ課金 されるのが大きな違いです。

フレームワーク自体は MIT ライセンスで 無料 です。LLM API コストは複雑なタスクで約$0.30(バジェットモデル使用時)。使い方に応じて local / VPS / サーバーレスを選べます。

セキュリティ面の優位性

セキュリティは Hermes Agent の訴求ポイントの一つです。2026年4月時点で、公知のエージェント固有CVEは確認できません。

OpenClaw は2026年3月に複数のセキュリティ脆弱性(CVE)が報告されています(詳細は GitHub Security Advisory を参照)。エージェントがユーザーの環境で広範な権限を持つことを考えると、これは無視できないリスクです。

Hermes Agent は後発である分、セキュリティ設計を最初から考慮に入れています。エンタープライズ環境でエージェントの導入を検討する場合、CVE履歴は重要な判断材料になるでしょう。

よくある質問

Q. Hermes Agent は無料で使えますか?

A. フレームワーク自体は MIT ライセンスで完全無料です。ただし、LLM の API 利用料は別途かかります。バジェットモデルを使えば、複雑なタスクでも約$0.30程度です。

Q. OpenClaw から移行できますか?

A. hermes setup コマンドに OpenClaw からの移行ウィザードが組み込まれています。既存の設定やワークフローをスムーズに移行可能です。

Q. コーディング専用ツールですか?

A. いいえ。CLI、Telegram、Discord、Slack、WhatsApp、Signal など15以上のプラットフォームに対応した汎用エージェントです。コーディングだけでなく、日常のタスク全般に対応します。

Q. どのモデルがおすすめですか?

A. OpenRouter 経由で200以上のモデルに対応しています。Nous Portal、NVIDIA NIM、Kimi/Moonshot、OpenAI、Hugging Face なども利用可能です。最低64Kトークンのコンテキストが必要な点に注意してください。

Q. SWE-Bench のスコアは?

A. Hermes Agent は独立した SWE-Bench スコアを公開していません。コーディング特化ではなく、汎用的な自律性に注力しているためです。コーディング性能を重視するなら Claude Code や OpenClaw との使い分け、または併用を検討するとよいでしょう。

まとめ

Hermes Agent は、タスクを繰り返すほど賢くなるクローズドラーニングループを核心とした、新しいタイプの AI エージェントです。OpenClaw の広範なエコシステムや Claude Code のコーディング性能とは異なるアプローチで、「自己改善」という独自のポジションを確立しています。

2026年4月時点で公知のエージェント固有CVEが確認できないというセキュリティ実績、MIT ライセンスの完全オープンソース、そして15以上のプラットフォーム対応は、エンタープライズ環境での採用を後押しする要素です。ZenChAIne では引き続き、AI エージェントの進化と実務での活用法をウォッチしていきます。

参考ソース