
Agent Skills とは何か — AIエージェントに再利用可能なスキルを追加する仕組み
はじめに
Claude Code、Cursor、Codex、Gemini CLI — AIエージェントを使った開発ツールが増えています。しかし、ツールが増えるほど「あのエージェントでやった設定を別のエージェントでも使いたい」「チーム全体で同じワークフローを共有したい」という課題が出てきます。
Agent Skills は、この課題を解決するための仕組みです。エージェントに追加できる再利用可能なプラグインであり、SKILL.md という共通フォーマットで定義されます。
この記事では、Agent Skills がどう生まれたのか、従来のカスタマイズ手法との違い、SKILL.md の構造、そして自分でスキルを作る方法を解説します。
Agent Skills の誕生と広がり
登場の経緯
Agent Skills は Anthropic が設計・開発し、2025年10月に Claude Code の機能として初めて公開しました。設計を主導したのは Anthropic の Barry Zhang、Keith Lazuka、そして Model Context Protocol(MCP)の生みの親でもある Mahesh Murag です。
公開直後、セキュリティ研究者の Simon Willison は「MCP より大きなインパクトがあるかもしれない」と評し、大きな注目を集めました。
オープン標準化と爆発的普及
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年10月 | Anthropic が Claude Code の機能として Agent Skills を公開 |
| 2025年12月 | Anthropic が Agent Skills をオープン標準として公開(agentskills.io)。Atlassian、Stripe、Figma、Notion など主要企業がローンチパートナーとして参加 |
| 2025年12月 | OpenAI が Codex CLI に Skills サポートを追加。GitHub Copilot も実験的サポートを開始 |
| 2026年1月 | Vercel が skills.sh と npx skills CLI を公開。「AIスキルの npm」として、スキルの検索・インストール・公開の基盤を提供 |
| 2026年1月 | Google Antigravity、Cursor(v2.4)が正式対応 |
| 2026年2月現在 | 17以上のエージェントプラットフォームが対応 |
MCP と同じ戦略 — Anthropic が先に実装し、オープン標準として公開し、競合が一斉に採用する — が再び成功した形です。
カスタムスラッシュコマンドとの違い
Agent Skills 以前から、各エージェントには独自のカスタマイズ手法がありました。Claude Code の .claude/commands/、Cursor の .cursor/rules/ などです。Agent Skills はこれらと何が違うのでしょうか。
3つのカスタマイズ層
AIエージェントのカスタマイズには、大きく分けて3つの層があります。
| ルール | カスタムスラッシュコマンド | Agent Skills | |
|---|---|---|---|
| 起動方法 | 常に自動適用 | ユーザーが /command で明示実行 | エージェントがタスクに応じて自動選択 |
| コンテキストコスト | 常にロード | 実行時にロード | 段階的ロード(メタデータ → 本文 → 参照ファイル) |
| ファイル構成 | 単一ファイル | 単一ファイル | ディレクトリ(SKILL.md + scripts/ + references/) |
| クロスプラットフォーム | 各エージェント固有 | 各エージェント固有 | 17以上のエージェントで共通 |
段階的ロード(Progressive Disclosure)
Agent Skills の技術的な鍵は、コンテキストウィンドウの効率的な使い方にあります。
- Tier 1(常時): frontmatter の
nameとdescriptionだけをロード(約100トークン) - Tier 2(必要時): タスクに関連すると判断されたら SKILL.md 本文をロード
- Tier 3(実行時):
scripts/やreferences/内のファイルは実際に必要になった時点でロード
ルールファイルは常にフルロードされるため、数が増えるとコンテキストを圧迫します。スラッシュコマンドはユーザーが明示的に呼び出す必要があります。Agent Skills は両者の長所を兼ね備え、必要な時だけ・必要な分だけコンテキストに展開されます。
ポータビリティ
もう一つの大きな違いは移植性です。.claude/commands/ は Claude Code でしか動かず、.cursor/rules/ は Cursor でしか動きません。Agent Skills は同じ SKILL.md がすべての対応エージェントで動作します。チームメンバーが異なるエージェントを使っていても、同じスキルを共有できるわけです。
Claude Code では 2025年末のアップデートで、従来のカスタムスラッシュコマンド(.claude/commands/)が Skills システムに統合されました。既存のコマンドは引き続き動作しますが、新規作成は SKILL.md フォーマットが推奨されています。
Agent Skills の仕組み
スキルとは何か
Agent Skills は、AIエージェントに特定の能力を追加するためのインストール可能なモジュールです。
例えば「仕様書を生成するスキル」をインストールすると、エージェントに「要件定義を作って」と話しかけるだけで、決められたフォーマットに従った仕様書が生成されます。スキルがなければプロンプトを毎回書く必要がありますが、スキルがあれば手順・出力形式・品質基準がすべて標準化されます。
スキルなし: プロンプトを毎回工夫 → 出力がバラバラ
スキルあり: 「要件定義を作って」→ 標準化された仕様書が生成
SKILL.md フォーマット
すべてのスキルは SKILL.md というファイルで定義されます。Anthropic がオープン標準として策定したフォーマットで、YAML frontmatter + Markdown 本文というシンプルな構造です。
---
name: spec-generator
description: |
Generate project requirements, design documents, and task lists.
Triggers: "Create requirements", "要件定義を作って"
license: MIT
---
# spec-generator
(ここにエージェントが従う詳細な手順を記述)
## 実行フロー
1. ユーザーの入力を解析
2. プロジェクト構造を調査
3. 要件定義書を生成
...frontmatter にはスキルのメタ情報(名前、説明、トリガーフレーズ)を、本文にはエージェントが実行時に従う具体的な手順を記述します。
SKILL.md はただの Markdown ファイルです。特別なランタイムやコンパイラは不要で、Git で管理でき、誰でもレビュー・編集できます。
ディレクトリ構造
スキルのディレクトリ構造は以下のパターンに従います。
skills/
└── skill-name/
├── SKILL.md # スキル定義(必須)
└── references/ # 補足ドキュメント(任意)
├── guide.md # 英語ガイド
└── guide.ja.md # 日本語ガイド
SKILL.md がスキルの本体で、references/ にはスキルが参照する補足資料を配置します。スキルの本文から references/ 内のファイルを読み込むことで、本体の行数を抑えつつ詳細な情報を提供できます。
対応エージェントとエコシステム
対応エージェント
2026年2月現在、SKILL.md フォーマットに対応しているエージェントは17以上あります。主要なものを挙げます。
| エージェント | 開発元 | 対応時期 |
|---|---|---|
| Claude Code | Anthropic | 2025年10月(オリジナル) |
| Codex CLI | OpenAI | 2025年12月 |
| GitHub Copilot | GitHub | 2025年12月(実験的) |
| Cursor | Cursor | 2026年1月(v2.4) |
| Gemini CLI / Antigravity | 2026年1月 | |
| Windsurf | Codeium | 2026年1月 |
| Kiro CLI | AWS | 対応 |
| OpenCode | OpenCode | 対応 |
この他にも Amp、Goose、Roo、Trae、Droid など多くのエージェントが対応しています。スキルがエージェントに依存しないため、一度作ったスキルはこれらすべてのエージェントで動作します。
インストール方法
スキルは npx skills コマンドでインストールします。
# GitHub リポジトリからインストール
npx skills add username/repo-name -g -y
# 特定のスキルだけインストール
npx skills add username/repo-name --skill skill-name -g -y-g はグローバルインストール(~/.claude/skills/ に配置)、プロジェクト固有にする場合は -g を外すと .claude/skills/ に配置されます。
スキルの公開
スキルは GitHub リポジトリとして公開します。リポジトリの skills/ ディレクトリにスキルを配置し、README にインストールコマンドを記載するだけです。npm や PyPI のような専用レジストリは不要です。
スキルの配布に特別なインフラは不要です。GitHub リポジトリがそのままパッケージレジストリとして機能します。
スキルを自作する
最小構成
スキルの最小構成は、ディレクトリと SKILL.md ファイルの2つだけです。
mkdir -p skills/my-skill---
name: my-skill
description: |
A brief description of what this skill does.
Trigger: "do something"
license: MIT
---
# my-skill
## 実行フロー
1. ユーザーの入力を解析する
2. 必要な情報を収集する
3. 結果を出力する
## 出力フォーマット
(出力の形式やルールを記述)設計のポイント
スキルを効果的に設計するためのポイントをいくつか挙げます。
トリガーフレーズを明確にする
description にユーザーが自然に発話するフレーズを含めます。日英両方に対応する場合は両言語で記載します。
description: |
Generate requirements documents.
Triggers: "Create requirements", "要件定義を作って"手順を具体的に書く
エージェントが従う手順は、人間が読んで迷わないレベルまで具体的に記述します。「適切に処理する」のような曖昧な表現は避け、具体的な入力・処理・出力を明記します。
ツール名をハードコードしない
特定の MCP サーバーやツール名を直接参照すると、そのツールがない環境で動作しなくなります。「ファイルを読み取る」「ファイル内を検索する」のように、機能ベースで記述します。
# 良い例
Read the file to understand the existing code structure.
# 悪い例
Use mcp__serena__read_file to read the file.
500行以内に収める
SKILL.md が長すぎるとエージェントのコンテキストを圧迫します。詳細な情報は references/ に分離し、必要に応じて読み込む設計にします。
まとめ
Agent Skills は、AIエージェントに再利用可能なスキルを追加するためのオープンな仕組みです。
- SKILL.md という共通フォーマットで、エージェント非依存のスキルを定義できる
npx skills addで GitHub リポジトリからワンコマンドでインストール- 自作も簡単 — ディレクトリと Markdown ファイル1つから始められる
- チーム共有 — スキルを通じてワークフローを標準化し、品質を均一化できる
ZenChAIne では、この Agent Skills の仕組みを活用した agent-skills をオープンソースで公開しています。仕様駆動開発のワークフローをスキルとして実装したもので、詳細は以下の記事をご覧ください。

