
Superset入門 — 10個以上のAIエージェントを同時に走らせるコードエディター
はじめに
ZenChAIne ではこれまで、AIコーディングエージェント時代のターミナル選択肢として cmux を繰り返し取り上げてきました。
- cmux入門 — AIコーディングエージェント時代のターミナル活用ガイド
- cmux だけで開発を回す — ペイン分割・ブラウザ・lazygit 実践
- Yazi + Neovim で完全 IDE 化
- cmux 公式スキル徹底解説
- agent-skills に cmux スキル3本を追加
cmux は macOS ネイティブ実装のターミナルで、ペイン分割やネイティブ Git 連携、公式スキルによる拡張など、「ターミナルを起点にエージェントと向き合う」体験を多面的に磨いてきたツールです。
一方で、「AIエージェント時代のターミナル/作業環境」というテーマには複数のアプローチがあります。ターミナルそのものを強化する cmux のような道もあれば、エディター寄りのUIと Git Worktree による並列実行基盤を提供する道もあります。
今回紹介する Superset は後者、つまり cmux とは別のアプローチを取る選択肢 です。複数の CLI ベースエージェントを Git Worktree で隔離しながら同時に実行できるデスクトップアプリケーションで、Claude Code、Codex、Gemini CLI など、ターミナルで動くエージェントならどれでも対応します。2026年2月27日の Product Hunt ローンチで 500 以上の Upvote を獲得し(#1 Product of the Day)、GitHub スター数は 9,200 を超えています。
ざっくり整理すると、cmux が「macOS ネイティブなターミナル × 複数ペイン × スキル拡張」で勝負しているのに対し、Superset は「Git Worktree ベースの並列エージェント実行 × 内蔵 Diff エディタ」で勝負している、という位置付けです。どちらが優れているという話ではなく、用途に応じて選べる選択肢が増えた、と捉えてください。
この記事では、Superset のインストールから実践的な使い方まで、ステップバイステップで解説します。
この記事のポイント
- Superset は「ターミナルで動くAIエージェント」を複数並列で動かすためのデスクトップアプリ
- 各タスクが独立した Git Worktree で隔離されるため、エージェント同士の干渉がない
- Claude Code・Codex・Gemini CLI など、CLI エージェントならどれでも動作する
- ワークスペースの作成からコードレビューまで、キーボードショートカット中心の高速ワークフロー
なぜ「並列エージェント」にはエディターが必要なのか?
AIエージェントを1つ動かすだけなら、通常のターミナルで十分です。問題は複数のエージェントを同時に走らせるときに起こります。
コンテキストスイッチのコスト: ターミナルのタブを5つ開いて Claude Code を走らせると、「どのタブで何が動いているか」「どのエージェントが入力待ちか」を把握するだけで認知的な負荷がかかります。タスクが増えるほど、管理コストが作業時間を圧迫します。
マージコンフリクトの地雷原: 同じブランチで複数のエージェントが同じファイルを編集すると、コンフリクトが頻発します。手動で Git Worktree を作ってブランチを分けることもできますが、5つ、10個と増えると管理が破綻します。
レビューの断片化: エージェントが生成したコードを確認するために、別のターミナルで git diff を打つか、VS Code を開く必要があります。エージェントが動いている環境とレビュー環境が分離していると、フィードバックのループが遅くなります。
Superset はこれらの問題を「ワークスペース」という単位で解決します。各ワークスペースが独立した Git Worktree を持ち、エージェントの実行・監視・レビューをひとつの画面で完結させます。
Superset のアーキテクチャはどうなっている?
Superset は Electron + React + TailwindCSS で構築されたデスクトップアプリケーションです。内部的には Bun をランタイムとして使い、tRPC で通信、Drizzle ORM + Neon でデータ管理を行っています。
コアとなる設計思想は3つあります。
1. ワークスペース = Git Worktree
ワークスペースを作成すると、Superset が自動的に Git Worktree を生成します。各ワークスペースは独立したブランチとファイルツリーを持つため、エージェント同士が同じファイルを競合する心配がありません。
2. エージェント非依存
「ターミナルで動くものなら何でも動く」がモットーです。Claude Code、Codex、Gemini CLI、OpenCode、Cursor Agent、Amp Code など、CLI ベースのエージェントであればすべて対応します。エージェントのロックインが発生しません。
3. ゼロコンフィグの即時起動
ワークスペースの作成は ⌘N(フルセットアップ)または ⌘⇧N(クイック作成)の1アクションです。プロンプトを入力するとブランチ名が自動生成され、セットアップスクリプトが走り、すぐにエージェントへタスクを送れます。
インストール手順
Superset は現在 macOS のみ公式サポートされています。Windows・Linux 版は "coming soon" と公式ドキュメントに記載されています。
前提条件
| 要件 | バージョン |
|---|---|
| OS | macOS |
| ランタイム | Bun v1.0 以上 |
| Git | 2.20 以上 |
| GitHub CLI | gh(推奨) |
方法1: DMG ダウンロード(推奨)
GitHub Releases から最新の .dmg ファイルをダウンロードし、Applications フォルダにドラッグ&ドロップします。
方法2: ソースからビルド
git clone https://github.com/superset-sh/superset.git
cd superset
cp .env.example .env
bun install
bun run dev初回起動時に macOS のセキュリティダイアログが表示される場合は「開く」をクリックしてください。
ワークスペースを作って最初のエージェントを動かす
インストールが完了したら、実際にワークスペースを作ってエージェントを動かしてみましょう。
Step 1: プロジェクトを開く
Superset を起動し、⌘⇧O で既存のプロジェクトディレクトリを開きます。Git リポジトリであれば、そのまま Superset のプロジェクトとして認識されます。
Step 2: ワークスペースを作成する
⌘N を押すと、ワークスペース作成ダイアログが開きます。
- プロジェクト: 対象のリポジトリを選択
- ベースブランチ: ワークスペースの元となるブランチ(通常は
main) - ワークスペース名: タスクを表す名前(例:
add-auth-endpoint) - プロンプト: エージェントに送るタスク内容(オプション)
プロンプトを入力すると、ブランチ名が自動生成されます。「OK」を押すと、Superset が以下を自動実行します。
- Git Worktree を作成
.superset/config.jsonのセットアップスクリプトを実行- ターミナルを開く
Step 3: エージェントを起動する
ワークスペースのターミナルで、使いたいエージェントを起動します。
# Claude Code
claude "APIに認証エンドポイントを追加して"
# Codex
codex "ダッシュボードのチャートコンポーネントを実装して"
# Gemini CLI
gemini "TypeScriptのエラーを修正して"エージェントが作業を開始すると、サイドバーにステータスが表示されます。
Step 4: 変更を確認する
エージェントの作業が完了したら、⌘L でチェンジパネルを開きます。変更されたファイルの一覧と差分がビルトインの Diff ビューアーで確認できます。CodeMirror ベースのエディタ(約 150KB、Monaco の 97% の軽量化)で、直接コードを修正することもできます。
問題なければ、ターミナルでコミット&プッシュし、PR を作成します。
複数エージェントの並列実行ワークフロー
Superset の真価は、複数のエージェントを同時に走らせるときに発揮されます。実践的なワークフローを紹介します。
並列タスクの割り当て
たとえば、以下の3つのタスクを同時に進めたいとします。
- バックエンドの API エンドポイント追加
- フロントエンドのコンポーネント実装
- ユニットテストの追加
それぞれのタスクに対してワークスペースを ⌘N で作成し、各ターミナルで異なるエージェントを起動します。各ワークスペースが独立した Git Worktree を持つため、ファイルの競合は起きません。
セットアップの自動化
毎回 npm install や .env のコピーが必要な場合、.superset/config.json で自動化できます。
{
"setup": ["./.superset/setup.sh"],
"teardown": ["./.superset/teardown.sh"]
}#!/bin/bash
# .superset/setup.sh
cp ../.env .env
bun install
echo "Workspace ready: $SUPERSET_WORKSPACE_NAME"ワークスペース作成時にこのスクリプトが自動実行されるため、エージェントはすぐにタスクに取りかかれます。
ワークスペース間の移動
⌘1〜⌘9: 番号で直接ジャンプ⌘⌥↑/⌘⌥↓: 順番に切り替え⌘B: サイドバーからクリックで選択
ワークスペースを切り替えても、ターミナルのセッション、スクロール位置、分割レイアウト、パネルの表示状態がすべて保持されます。
外部エディタとの連携
コードを VS Code や JetBrains IDE で編集したい場合、⌘O でワークスペースを外部エディタで直接開けます。カーソル位置とファイル選択が引き継がれるため、シームレスにハンドオフできます。
よくある質問
Q. cmux との違いは何ですか?
A. cmux は macOS ネイティブのターミナルアプリで、Ghostty のレンダリングエンジンをベースにしています。エージェントの通知機能や組み込みブラウザが特徴です。一方、Superset は Git Worktree による完全な隔離を提供し、複数エージェントの並列実行に特化しています。ターミナルとして使うなら cmux、エージェントオーケストレーターとして使うなら Superset、という棲み分けです。
Q. 無料で使えますか?
A. はい。Superset は GitHub でソースコードが公開されており、Elastic License 2.0(ELv2)のもとで無料で使用できます。API キーのプロキシもなく、各エージェントの API キーはユーザー自身が管理します。
Q. Windows や Linux でも動きますか?
A. 現時点では macOS のみ公式サポートされています。公式ドキュメントでは Windows・Linux 対応は "coming soon" と記載されています。
Q. Cursor や Windsurf のような AI IDE とは何が違いますか?
A. Cursor や Windsurf は IDE 自体に AI 機能を組み込んでいます。Superset は CodeMirror ベースのビルトインエディタと Diff ビューアーを備えていますが、主な目的は既存の CLI エージェントをオーケストレーションする「メタツール」としての機能です。好きなエージェントを好きな組み合わせで使える自由度が特徴です。
まとめ
Superset は「AIエージェントを何個でも同時に走らせたい」という開発者のニーズに正面から応えるツールです。Git Worktree による自動隔離、エージェント非依存のアーキテクチャ、キーボードショートカット中心の操作体系が、マルチエージェント開発のボトルネックを解消します。
cmux がターミナルとしてのエージェント体験を追求しているのに対し、Superset はエージェントのオーケストレーションに特化しています。両者を組み合わせることで、ターミナルの快適さとマルチエージェントの並列実行を両立できます。
AIエージェントの数が増えるほど、それらを管理するツールの重要性も増します。まずは1つのワークスペースを作って、普段のタスクを Superset 上で試してみてください。
ZenChAIne では、AIエージェントを活用した開発ワークフローの実践と発信を続けています。